集中講義内容(予定)


荒川 知幸 助教授(奈良女子大学理学部)
平成19年5月7日(月)〜5月11日(金)
数理科学特別講義IV
「W代数と頂点代数」
講義内容(予定)
$W$代数について講義する。 $W$代数は最近ではKostant-LynchのWhittaker模型の理論の chiralization(アフィン化) として理解されており, 表現論的にも極めて興味深い. 講義では $W$代数の このような 最近の理解について お話しする予定である。
1)OPE と頂点代数
2)Associated Zhu's Poisson varieties.
3)uantum BRST reduction と$W$代数
4)$W$代数のHarish-Chandra 同型
5)$W$代数の表現論



集中講義内容(予定)


谷内 靖 助教授(信州大学理学部)
平成19年5月14日(月)〜5月18日(金)
数理科学特別講義VI
数理科学持論E
非圧縮性流体の数理
講義内容(予定)
自然界の流体の流れは、多くの場合、密度の変化は無視でき、そのような流体は非圧縮性流体(縮まない流体)と呼ばれる。この流体に粘性がある場合、流体の運動はNavier-Stokes方程式により記述され、粘性がない場合、流体の運動はEuler方程式により記述される。
$$
\left\{
\begin{array}{ll}
\frac{\partial}{\partial t}u-\nu\Delta u +u\cdot\nabla u +\nabla p=0
\qquad & {\mathrm{in}} \ \ t > 0 \ \ {\mathrm{and}}
\ \ x \in \re^n, \\
\nabla \cdot u=0
\qquad & {\mathrm{in}} \ \ t> 0 \ \
{\mathrm{and}} \ \ x \in \re^n, \\
u|_{t=0}=u_0
\qquad & {\mathrm{in}} \ \ x \in \re^n,
\end{array}
\right.
\leqno{\mbox{(N-S)}_{\nu}}
$$
ここで、$u=(u^1(x,t),u^2(x,t),\cdots u^n(x,t))$, $p=p(x,t)$ はそれぞれ流体の速度場と 圧力場を表す未知関数であり、$u_0$は与えられた初期速度場、 $\nu$は粘性係数である。$\nu>0$の場合がNavier-Stokes方程式であり、 $\nu=0$の場合がEuler方程式である。
この講義では特に、2次元Euler方程式の初期値問題に対し、初期条件が空間遠方で減衰も増大もしない場合の一意可解性を考察する。 Navier-Stokes方程式に対しては、このような初期条件に対する可解性の研究は多くの研究者により発展させられている。この講義ではEuler方程式の解をNavier-Stokes方程式の粘性係数を0に近づけたときの解の列の極限関数として構成する手法により、Euler方程式の可解性を考察する。さらに、Euler方程式の解の一意性を、Besov空間等を用いて考察する。

\item 関数空間($L^p_{uloc}$, BMO, Besov空間など)
\item Navier-Stokes方程式の可解性
\item 2次元Euler方程式の大域可解性
\item Euler方程式の解の一意性
\item 熱対流方程式(時間に余裕があれば)




Jongil PARK 教授(Dept.Math Seoul National Univ)
平成19年6月25日(月)〜6月29日(金)
数理科学特別講義VIII
The geography of simply connected smooth 4-manifolds
講義内容(予定)
 One of the fundamental problems in smooth 4-manifolds is to classify simply connected smooth 4-manifolds. The classical invariants of a simply connected smooth 4-manifold are encoded by its intersection form QX, a unimodular symmetric bilinear pairing on $H^2(X:Z)$. For example, one can determine its rank$ b^2(X) $= $b^+_2 +b^-_2 $, its signature sigma(X) =$ b^+_2 -$ $b^-_2 $, and its Euler characteristic e(X) = $b_2(X) + 2$ from $Q_X$. M. Freedman showed that a simply connected smooth 4-manifold is determined up to homeomorphism by QX. The situation in the smooth category is strikingly different. Hence it is an important question to know which unimodular, symmetric, bilinear integral forms are realized as the intersection form of a simply connected smooth 4-manifold, and which simply connected smooth 4-manifolds admit more than one smooth structure. We call these geography problems of simply connected smooth 4-manifolds.

 Gauge theory - Donaldson theory and Seiberg-Witten theory - has been very successful in the geography problems. For example, S. Donaldson proved that the intersection form of a simply connected, definite, smooth 4-manifold is diagonalizable, and it has been known that most known simply connected irreducible smooth 4-manifolds with $b^+_2$ odd and large enough admit infinitely many distinct smooth structures. Recently, there has also been progress in the case of $b^+_2$ small, in particular$ b^+_2$ = 1.

 In this lecture series I’d like to review known results on the geography problems, in particular, the uniqueness problems of smooth structures on 4-manifolds. For this, I first survey various constructions of smooth 4-manifolds such as a logarithmic transform, fiber-sum, a knot surgery and a rational blow-down surgery. These constructions are main techniques to convert smooth structures of a given smooth 4-manifold. I also address recent developments in the geography of smooth 4-manifolds with $b^+_2$ = 1.

A tentative schedule is the following:

Lecture I: Overview of geography problems
Lecture II: Surgery 1 - A logarithmic transform and fiber-sum
Lecture III: Surgery 2 - A knot surgery (optional)
Lecture IV: Surgery 3 - A rational blow-down surgery
Lecture V: Smooth 4-manifolds with $b^+2$ = 1




高山 信毅 教授(神戸大学理学部)
平成19年5月28日(月)〜6月1日(金)
応用数理特別講義III
Knoppix/Math と方程式
講義内容(予定)
Knoppix/Math はフリーの数学ソフトウエア, 文書を集めたCD, DVDである.
自分は方程式を理解することと解くこと, とくに計算機を活用して 方程式を理解したり解く事に興味がある. 方程式はいろいろなものがあるが, 筆者はいろんな偶然がかさな り微分方程式とくに超幾何方程式系を親しく研究することとなった. 超幾何方程式系は数学のさまざまな分野に関係がある. この講義では超幾何方程式系を解く事, 理解する事, さらには数学者, 数学教育関係者(情報も), 数学に 関係する学生としての毎日の活動に関連した話題をえらび, 主に KNOPPIX/Math に収録されたソフトウエアおよびバックグラ ンドの数学を解説し, また開発参加者もつのりたい. プログラミングについて多少の予備知識があると この講義の理解に都合がいいが必須というわけではない. \TeX を使ったことがある程度でもなんとかなる. 前半は大学教養程度の数学,後半では数学科3年生程度の数学知識を仮定する.
Knoppix/Math はためしてみないと面白くない.
\underline{ LAPTOP コンピュータの持ち込み歓迎である.} 毎回講義のフィードバック用紙(Knoppix/Math についての相談 事, やってみた計算等)を提出してもらう(単位取得 の条件でもある). 毎日の内容(多分全部は無理なのでご希望に応じて内容を選択します)

1. 形代数と Knopppix/Math. 統計システムもちょっとかじってみよう.
2. 分積分 と Knoppix/Math.
3. Graphics と knoppix/Math. サンプルプログラム集 math-polyglot をのぞいてみよう.
4. グレブナ基底の理論, 代数方程式系, グレブナ扇,tropical幾何, 統計と Knoppix/Math
5. cohomology 群, $D$加群の計算と Knoppix/Math

超幾何関数を解く話までは到達しないが, 全部関係してるので,その話は  この講義に関係して書きかけの本があるので,それをお楽しみに.




斉藤 恭司 教授(京都大学数理解析研究所)
平成19年6月4日(月)〜6月8日(金)
数理科学特別講義II
ルート系とリー環の圏論的構成 --- McKay対応と行列分解
講義内容(予定)
McKay 対応とは、正多面体群 (注1)に対し、有限ルート系のディンキン図式 (注2)を対応させるものである。 これは、一見異なると思われていた二つの数学的世界:一つは、ギリシャ時代以来良く 知られてきた正多面体の分類、もう一つは Killing Cartan 等により約100年前に成し 遂げられた単純リー環の分類、それらの分類リストの間に一対一の対応が付くというと いうことであるから、1980年の発表以来反響を呼び、多くの数学者をインスパイアして きたのも頷ける話である。
 その頃、私は、楕円積分を一般化した原始形式とその積分の理論を構築するという研究目標を持っていて、そのために単純リー環を一般化した理論を作りたいと考えていた。 その理由は別途説明するが,McKay 対応の話を聞いたとき「これはいける、僕の期待し ているリー環の構成にヒントを与えるのでないか」と思った。 つまり、正多面体群のリストを何か別のものに置き換え、その対応物を見れば、 単純リー環の一般化が得られるのでないか。
 しかし、正多面体も単純リー環も完全に分類されている。 いまさら,それに付け加えるものとして、いったい何があるというのであろうか。 結論を言ってしまうと、そのような試み(注3)の中から数年後に生まれ てきたものが、正規ウェイト系なるものである。 ここで、正規ウェイト系とは、一見、正多面体群とは似ても似つかない四つの正整数の 組 $W:=(a,b,c;h)$ であって、$W$ から定まる次の $T$ の有理式
$$\hbox{\small$\displaystyle
X_W(T)
=T^{-h}
\frac{(T^h-T^a)(T^h-T^b)(T^h-T^c)}{(T^a-1)(T^b-1)(T^c-1)}
$}$$
が $T$ のローラン多項式に展開できるもののことである。 では、このような正規ウェイト系が、何故、McKay 対応の一般化を与えるのか、その端緒を簡単に説明しよう。 ただし、きちんとした説明は講義に譲り、ここでは象徴的なことがらの説明にとどめる。
 上記の「ローラン多項式に展開できる」という条件は 展開に $T$ の負巾も許すと いうことだが、条件を強めて $T$ の正巾しか出てこないという制約を課してみよう。 すると、そのような条件を満たす正規ウェイト系は実は5種類しかない。 それが、丁度ピッタリ、McKay 対応に登場した 5つの対象のリストと1対1に対応し ているのである。 例えば、その5種類のウェイト系のうち $\mathrm{E}_8$型と呼ばれるもの は $(6,10,15;30)$ であるが、上記の $X_W(T)$ を多項式に展開すると次のようになる。
$$\hbox{\small$\displaystyle
T^{-30}
\frac{(T^{30}-T^6)(T^{30}-T^{10})(T^{30}-T^{15})}{(T^6-1)(T^{10}-1)(T^{15}-1)}
= T+T^7+T^{11}+T^{13}+T^{17}+T^{19}+T^{23}+T^{29}
$}$$
ここで、右辺の展開式をじっと見てみると、$T$ の単項式達の巾指数が、ちょうど $\mathrm{E}_8$ 型ルート系の exponents と呼ばれるものに一致していることに気付く。 他の4種類の場合も同様である。 これではまだルート系にもリー環にもなっていないが、少くとも分類リストが対応するという点で、何かありそうである。
 そして20年の紆余曲折のすえ、共同研究者とともに私は一つの道筋に至った。 それは、ウェイト系に対し圏論的にルート系やリー環を構成するというものである。
 本講義ではまず、ウェイト系に対し、ある特別な三角圏を行列分解の理論を利用して構成する。 その三角圏のグロタンディック群(K群)を考えると、正の巾指数しかない5つの場合 には、それらの K群の中に、対応する5つの単純ルート系が出てくる。 そして、負の巾指数を許した場合にも、ある一般化された意味の無限ルート系が登場するのである。 まだ解明途上ではあるが、その仕組みについて紹介する予定である。 また、時間が許せば、対応する無限次元リー環が、特異点の半普遍変形の空間や 原始形式とどのように関わってくるのかについて語りたいと考えている。

注1 正確には、巡回群、 正二面体群、正四面体群、正六面体群=正八面体群、
   正十二面体群=正二十面体群の5種類である。
注2 正確には、simply laced と呼ばれる $\mathrm{A}_l, \mathrm{D}_l,
   \mathrm{E}_6, \mathrm{E}_7, \mathrm{E}_8$ の5種類である。
注3 高次元の正多面体群を考えるという一般化や、 結晶群を考えるという一般化も
   ありうるが、ここでは正多面体群を球面幾何と思うことにして、その平面幾何や
   双曲的幾何への一般化を考えようというのである。




泰中 啓一 教授(静岡大学 工学部)
平成19年7月9日(月)〜7月13日(金)
応用数理特別講義I
応用数学XD
生物の生き残り戦略とゲーム理論
講義内容(予定)
地球温暖化や生物多様性の保全などの環境問題は、今世紀最大の課題といわれ ている。現代の大量絶滅を食い止めるためには、多くの人々の不断の努力が必要であ ろう。どんな生物が生き残り、どんな生物が絶滅するかは、簡単に予見できる もの ではない。
 生物は一見すると無駄とか冗長性(リダンダンシー)と思えるような形質 を 様々に進化させている。現在の生き物は、長い進化の試練を経ており、最適 になっ ているはずである。それなのに一見すると、とても最適とは思えないような、様々な 無駄が目に付く。なぜこの生物はこんな生活をしているのだろう?なぜこんな 形質が進 化したのだろうか?ときにはコンピュータ・シミュレーションで確かめてみる。これま での研究(ゲーム理論や最適化理論)によって解決したものもあれば、十 分に解決 しないものもある。本講義は、このようなリダンダンシーを紹介する。おそらく聴衆 は、たくさんの最適性に気が付くはずである。また短期的最適性と長期的最 適性が まったく異なることに気が付くはずである。
 近年、格子モデルの論文が生態学の雑誌に多く出版されるようになってきた。 空間の問題は、ブレイクスルーと言っても過言ではない状況である。現代 の生物大 量絶滅も、空間の問題と密接に関係している。なぜなら、現代の絶滅の原因は、 「生息 地の破壊」と「種の移入(導入)」に帰することが多いからである。他 方、数理生 態学には個体群動態に対してロトカ・ボルテラモデルという微分方程式によるアプ ロー チがあり、60年以上の伝統を持っている。
 私は、格子モデルの研究を20年間行ってきた。この成果も報告する予定 であ る。伝統的な非格子モデル(微分方程式)の結果と比較しつつ、「生き残 る生物、 絶滅する生物」についての議論を進める。



二木 昭人 教授(東京工業大学大学院理工学研究科)
平成19年10月15日(月)〜10月19日(金)
数理科学特別講義V
数理科学続論D
Extremal K\"ahler 計量と GIT 安定性
講義内容(予定)
定スカラー曲率ケーラー計量,特にケーラー・アインシュタイン計量の 存在問題はGIT安定性と密接に関連する。 実際,代数多様体の退化に対しK安定性と呼ばれる安定性がその ような計量が存在するための必要条件であること が知られており,十分であることも予想されている。関連した話題とし てコンパクト佐々木アインシュタイン 多様体についても講義する。



竹井 義次 准教授(京都大学数理解析研究所)
平成19年10月22日(月)〜10月26日(金)
数理科学特別講義XII
完全WKB解析と変換論Painlev\'e 階層へ ---
講義内容(予定)
複素領域における線型常微分方程式や、非線型方程式である Painlev\'e 方程式・Painlev\'e 階層の完全 WKB 解析について解説するのがこ の講義の目的である。

完全 WKB 解析は Borel 総和法に基礎を置く(プランク定 数 $\hbar$ に関する) 漸近解析であり、微分方程式の解の大域的性質の解析に威力を発揮す る。特に、 線型方程式のモノドロミー保存変形を記述する Painlev \'e 方程式の場合は、 付随する線型方程式も一緒に完全 WKB 解析の視点から議論する ことにより、 その大域構造の解析が可能となる。

実際に解の大域的性質の解析を可能にするのは、変わり点と Stokes 曲線から 成る Stokes 幾何と呼ばれる幾何学的対象と、Stokes 曲 線上で成立する 接続公式と呼ばれる解の間の解析的関係である。そして、この接続公式の 導出にあたっては、標準的な方程式への変換論が重要な役割を果たす。

この講義では、超局所解析とも密接に関係するこうした変換論の解説を 中心に、 完全 WKB 解析の初歩から始めて、できれば高階 Painlev \'e 方程式の階層に 対する最近の結果についても論じてみたい。具体的には、ほぼ次の順序 で講義を 進めていく予定である。

\S 1. 完全 WKB 解析の基礎
\S 2. 線型方程式に対する変換論
\S 3. Painlev\'e 方程式に対する完全 WKB 解析
\S 4. 高階 Painlev\'e 方程式の完全 WKB 解析に向けて

[参考書]
$\bullet$ 河合隆裕,竹井義次:特異摂動の代数解析学,岩波書店,1998.
$\bullet$ 岡本和夫: パンルヴェ方程式序説,上智大学数学講究録19,1985.
$\bullet$ 高野恭一: 常微分方程式,朝倉書店,1994.




太田 啓史 准教授(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
平成19年10月29日(月)〜11月2日(金)
数理科学特別講義XI
Lagrangian filtered $A_{\infty}$ algebraの構成.
講義内容(予定)
この講義の希望的目標は、ラグランジアン部分多様体に付随して定まるフィルター付き$A_{\infty}$代数の構成について、特に横断正則性に焦点を当て詳しい証明を行うこと です。以下の論文の深層部の一つです。理由は、我々は上の代数を厳密に構築し、それを基礎としてラグランジアン交叉のFloerコホモロジー理論を展開しましたが、そこであらわれた議論の手法や考え方は、未だその基礎付けが確立していない、位相的場の理論に関係するある種の幾何学(例えばsymplectic field theoryなど)の基礎付けを行う際にも、今後ますます有用になるだろうと考えるからです。「お話」的なラフなアイデアはもちろん大切ですが、「お話」に終始せず、それをきちっと具現化させることの(当たり前の)大切さが伝われば幸いです。例え証明が完結しなくとも、基本的な考え方や何をすべきか、を理解して頂けるようにしたいと思います。

1. 序
主定理の提示とそのための準備。 話の流れと背景あるいはシンプレクティック幾何への具体的な応用例 (この部分はお話)。
2. ホモトピー(代数ーウオーミングアップ)。
$[0,1]\times C$ のmodel。 $A_{\infty}$代数におけるWhiteheadの定理とその証明。 (Maurer-Cartan解とゲージ不変性。canonical modelの構成。)
3. 倉西構造。
 多価摂動。$\bf Q$ 基本チェイン。
4. $A_{n,K}$構造の幾何学的実現。
5. $A_{n,K}$構造から$A_{\infty}$構造へ。
 繰り込みの方法とホモトピー代数。
(番号と日にちは必ずしも対応しない。)
講義内で割愛すること:
(1) モジュライ空間上の倉西構造の存在に関する非線形解析。理由は、 そこで用いられる解析は、ある程度標準的なものであり、 新しいことは特に必要としないから。
(2) 向きと符号に関する議論。理由は、時間上の理由以外に特にない。
Reference:
{[FOOO]} K. Fukaya, Y-G Oh, H. Ohta and K. Ono, Lagrangian intersection Floer theory--anomaly and obstruction--, preprint (2006年版). 特にChapter 7 Transversality.




斎藤 憲 准教授(大阪府立大学人間社会学部)
平成19年11月5日(月)〜11月9日(金)
数学史

講義内容(予定)
第1日(11月5日)
ギリシャ数学の大きな部分を占める幾何学は,計量の幾何学と位置の幾何学に大別できる.前者は求積法,後者は円錐曲線論に代表されるもので,17世紀にそれぞれ微積分学と解析幾何学が生まれる土壌となった.第1日はギリシャ数学全般について概説的な講義をする.

第2日・第3日(11月6日,7日)
計量の幾何学を代表するアルキメデスの著作を読む. 爪形,あるいは楔形として知られる立体の求積を検討する. これは著作『方法』で3通りの方法で扱われるが,このうち命題14と,命題15の 二通りの求積を検討する.『円錐状体と球状体について』の命題1が補助定理として 利用されるので,これも検討の対象に加える.

第4日・第5日(11月8日,9日)
位置の幾何学は問題解法としてのアナリュシス(解析の語源であるが,意味は 現代と違う)と密接に関連する.これに関する議論はいまだに盛んだが, 実際に解析が用いられた原典が十分に検討されているとはいえない.
ここでは,パッポスによる解析の定義(『数学集成』第7巻冒頭)を 見て,最近の研究を紹介した後, 角の三等分の解析による解法(『数学集成』第4巻命題31--33), さらに位置の幾何学を代表する アポロニオスの『円錐曲線論』の第2巻末尾の 与えられた条件をみたす接線を引く問題の解法を検討する(命題51--54).

授業で講読するテクストは1日目にコピーを配布する.

参考文献

第1日
斎藤憲「ギリシアの幾何学」『現代思想』2006年7月号,68--91.

第2日,第3日
斎藤憲「アルキメデスの求積法」『数学』第55巻2号(2003), 166-179.
Reviel Netz - Ken Saito - Natalie Tschernetska ``A New Reading of \textit{Method} Proposition 14: Preliminary Evidence from the Archimedes Palimpsest.'' Part 1: \textit{SCIAMVS} 2(2001), 9-29; Part 2: 3(2002), 109-127.
佐藤徹『アルキメデス方法』東海大学出版会 1990

第4日,第5日
J. L. Berggren and G. Van Brummelen, ``The Role and Development of Geometric Analysis and Synthesis in Ancient Greece and Medieval Islam'', in P. Suppes, J. Moravcsik, and H. Mendell, eds., \textit{Ancient and Medieval Traditions in the Exact Sciences}, Stanford: CSLI Publications, 2000.

Pappus of Alexandria. \textit{Book 7 of the Collection.} Ed. and trans. Alexander Jones. 2 vols. New York: Springer, 1986.

Pappus d'Alexandrie. \textit{La collection math\'ematique.} tr. Paul Ver Eecke. 2 vols. Paris, 1933. Reprint, Paris: Blanchard, 1982.

Apollonius of Perga. \textit{Conics : Books I-III.} Tr. R. Catesby Taliaferro. Santa Fe: Green Lion Press, 2000




森下 昌紀 教授(九州大学大学院数理学研究院)
平成19年11月12日(月)〜11月16日(金)
数理科学特別講義T
「結び目と素数」
講義内容(予定)
 結び目と素数の類似に基づき、結び目理論と整数論の基本的な概念・枠組みの間の類似性について平行的に論じます。この類似性を通じ、Gaussから分かれた2つの道を現在の視点から見直し、両者の間に橋を架けることが目的です。数学は一つ、ということが感じられたら幸いです。

 予備知識をあまり仮定せずに理解できるように、はじめに準備的な事柄をまとめようと思います。

序 Gaussから分かれた2つの道--平方剰余とまつわり数--
0 基本群とGalois群
1 結び目と素数
2 まつわり数と平方剰余
3 結び目と素数の分解
4 絡み目群と分岐条件付きGalois群
5 Milnor不変量と多重べき剰余
6 ホモロジー群とイデアル類群--高次種の理論
7 Alexander-Fox、トーションの理論と岩澤理論
8 結び目群と素数群の表現の変形




Ivnov Alexander 教授(ロンドン大学インペリアルカレッジ)
11月7日(水)、11月9日(金)、11月12日(月)〜11月14日(水)
無限次元構造論
散在型有限単純群モンスターへの入門
講義内容(予定)
Approaching the Monster

 The lecture series is based on an ongoing project to built up the theory of the Monster group starting with what is called the Monster amalgam. The latter is formed by three groups and the axioms specify their normal series and also the indexes of their intersections. The main steps of the project are the following: (1) prove that the amalgam (subject to the axioms) exists and unique up to isomorphism; (2) construct a faithful representation of the amalgam, by which it is meant a representation for each of the three groups, forming the amalgam, which agree on the intersections (the representation has dimensions 196,883); (3) show that the representation in (2) preserves a commutative algebra and inner products on the underlying vector space and that one member of the agalgam is the centralizer of an involution in the automorphism group of the products (this enables one to show that the image under the representation is a nonabelian simple group); (4) calculating with the uni versal completions of various subamalgams in the Monster amalgam identify a number of important subgroups in the Monster including the double cover of the Baby Monster; (5) considering the action of the Monster group (which by our definition is the universal completion of the Monster amalgam) on the cosets of the double cover of the Baby Monster show that there exists only one completion of the Monster amalgam (this unique completion is universal and coincides with the image under the 196,883-dimensional representation); (6) calculating with the 196,883-dimensional representation determine the number of the Baby Monster type involutions in the Monster, which gives the order of the Monster. Within the lecture course I will also give a general introduction to the theory of the sporadic simple groups viewed in the framework of the classification of finite simple groups.




島田伊知朗 准教授(北海道大学大学院理学研究院・理学部)
平成19年11月26日(月)〜11月30日(金)
数理科学特別講義]
数理科学持論C
「格子理論とK3曲面」
講義内容(予定)
格子理論と計算機を使ったK3曲面の研究について講 義する.
基礎となるのは,複素K3曲面の周期写像に対する Torelliの定理と, 超特異K3曲面のPicard格子に関するRudakov-Shafarevichの定 理である.
これらの定理がK3曲面の幾何(および数論)の研究 にどのように応用されるかについて ,具体的な計算機アルゴリズムを提示しつつ解説する.

予定

(1) Overview

(2) 正規K3曲面上の有理2重点

(3) 偏極正規K3曲面のモジュライ

(4) 超特異K3曲面

(5) 数体上の特異K3曲面




松井 卓 教授(九州大学大学院数理学研究院)
平成19年12月10日(月)〜12月14日(金)
数理科学特別講義IX

講義内容(予定)
無限自由度量子系の統計力学的側面を関数解析、作用素環的手法を使って比較的最近得られた結果の解説を行う。
特に非平衡定常状態に関した次の話題を中心として講義する。

1.フォン・ノイマン代数のモジュラー理論の復習と Fluctuation Theorem
2.ボーズおよびフェルミ自由粒子系の準自由状態の復習と自由粒子系の非平衡状態
3.Non-Split inclusion と無限自由度量子状態での Entanglement

仮定する知識は、学部レベルの関数解析、初等的な作用素環の結果であるが必要に応じて補足する。




長谷川 浩司 講師(東北大学大学院理学研究科)
平成19年12月17日(月)〜12月21日(金)
応用数理特別講義U
量子離散可積分系入門
講義内容(予定)
近年研究が活発な可積分系の量子離散化についての入門を試みたいと思います。

離散化(差分化)とはすなわち漸化式であり primitive かもしれない対象です が、ハミルトン系としてさらに量子化(非可換化、正準量子化)まで扱うことは 可解格子模型の理論とも関連して興味深く、現代的意味があると考えられます。

微分方程式の離散化(差分化)には一般に任意性が大いにありますが、対称性を 保存する「良い離散化」を許す場合として、戸田方程式およびパンルヴェ方程 式を扱います。背景にある量子群的構造から、これらの系に特徴的な離散的時 間発展(時間を1単位だけ進める変換)を、離散ハミルトン系として(再)構成す ることなどについて述べたいと思います。

予定はおよそ以下の通りです。

・(量子)離散戸田格子あるいはLRアルゴリズムあるいは Harper 作用素、お よび(量子)離散パンルヴェ方程式の紹介

・量子群(量子展開環)の基礎知識、R行列と量子離散戸田格子の離散時間発展

・パンルヴェ方程式におけるワイル群有理作用の量子離散化と量子離散パンル ヴェ方程式

・ワイル群有理作用と Berenstein-Kazhdan の幾何結晶。および、量子版有理 作用の量子群による解釈

・Faddev-Volkov の量子離散 sine-Gordon 方程式

参考書 (深い予備知識は特に仮定しません。)
神保道夫著「量子群とヤン・バクスター方程式」「ホロノミック量子場」
野海正俊著「パンルヴェ方程式」




田端 正久 教授(九州大学大学院数理学研究院)
平成20年1月21日(月)〜1月25日(金)
応用数理特別講義V
流れ問題の有限要素解析とその応用
講義内容(予定)
 流れ問題の有限要素解析について講義し,その応用を紹介する.有限要素法は偏微分方程式の代表的な数値解法の一つであり,構造問題,流体問題,電磁場問題など科学と工学の広範な領域で実用計算に,数値シミュレーションに,用いられている.計算機性能の向上に伴い,その適用可能範囲はどんどん広がりつつあり,今後その重要性は一層増大すると思われる.その数学的基礎理論の発展は計算の正当性を保証し,解析可能な問題の範囲を広げること,より精密な解析を可能にすることのために必須である.
 本講義では,移流拡散方程式,定常Stokes方程式,非定常Navier-Stokes方程式と順を追って,流れ問題の有限要素近似理論を解説する.流れ問題において,移流項が存在する特徴は移流拡散方程式で,流速と圧力の混合型近似が現れる特徴はStokes方程式で,それぞれの特性を説明する.Navier-Stokes方程式は,これらの両方の特徴を持つ非線形偏微分方程式系である.適切な関数空間を設定し,その枠組みで近似解の厳密解への収束性を論じる.有限要素法の大きな利点のひとつは汎用プログラミングに向いていることであり,実際の計算手法の要点と理論との関連も述べる.
 これらの発展として,特性曲線に基づく有限要素近似,気液混相流など二流体問題への応用について最近の結果を述べる.特性曲線に基づく方法は物質微分を近似する考えに基づいており,元の問題が非対称であるにかかわらず,最終的に解くべき連立1次方程式の係数行列が対称行列になる利点がある.行列が対称であるか否かは,大規模線形計算において大きな違いがある.二流体問題では二流体を分離する界面位置は未知であり,その界面で表面張力が働いている状況を考える.この問題に対して収束性を保証する数値計算スキームはまだ確立されていないが,ある有限要素スキームについて数値的収束性を議論する.気泡上昇問題などいくつかの数値計算結果も紹介する.
 有限要素法の基礎知識については,必要に応じて,講義中に補足する.



伊山 修 准教授(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
平成20年1月28日(月)〜2月1日(金)
数理科学特別講義VII

講義内容(予定)
多元環$\Lambda$の表現論とは, $\Lambda$-加群の成す圏の構造を調べる事です. 講義では今日常識となっているAuslander-Reiten理論と傾理論を解説し, その応用 例を一つ挙げる予定です. 参考書として[1]を挙げておきます. 予備知識はほとんど 不要です. 環 と加群, 圏と関手の定義と, ホモロジー代数の基本事項(射影分解, $\Ext$, $\Tor$)を知っていれば十分ですが, 必要に応じて[2]を参照してください.
 講義では, 初日に有限次元多元環を扱う上でどうしても必要な事柄である, Jacobson根基, 冪等元, Krull-Schmidt型定理, 森田同値などを解説します.
 次に, 多元環の表現論の古典理論である, Auslander-Reiten理論を解説します. {\bf 安定圏}$\underline{\mod}\Lambda$と{\bf 余安定 圏}$\underline{\mod}\Lambda$を定義し, {\bf AR移動}と呼ばれる圏同値
\[\tau:\underline{\mod}\Lambda\to\overline{\mod}\Lambda\]
および, {\bf AR双対性}と呼ばれる関手的同型
\[\underline{\Hom}_\Lambda(X,Y)\simeq D\Ext^1_\Lambda(Y,\tau X)\] を構成します. これを用いて, $\mod\Lambda$の構造の基本単位を与える{\bf 概分 裂完全列}
\[0\to\tau X\to E\to X\to0\]
が構成されます.
 もともとAuslander-Reiten理論は, 直既約$\Lambda$-加群の分類を動機として発展 してきたものですが, 今日では表現型の理論によって, 全ての直既約$\Lambda$-加群の分類が必ずしも良い問題意識では無い事が知られています. $\mod\Lambda$の圏構造において, 何らかの意味で特徴的な加群に限定して研究す る方向に, 研究者の多くは向かっているようです. その中でも重要なものの一つとして{\bf 傾加群}がありますが, 講義の次の目的は 傾理論の解説です. もともと傾理論は, 性質の良く分かっている多元環から, 傾斜群 の準同型 環をとることによって, 元の多元環と性質の似通った, 新しい多元環を作り出すために考え出されたものでした. 今日では傾理論は, 導来圏の観点から解釈されてい て, 特に傾加群の 一般化である傾複体によって, 2つの環の導来圏が同値である事が特徴付けられる事が知られています.
 以上の基本事項の応用として講義では最後に, 一変数多項式環の剰余環
$\Lambda=k[x]/(x^n)$の{\bf Auslander多元環} \[\Gamma=\End_\Lambda(\bigoplus_{i=1}^nk[x]/(x^i))\] に対して, 傾加群の分類を解説します.

{\bf 定理} $n$次対称群と, $\Gamma$の基本的傾加群の同型類の間に一対一対応が 存在する.
 もともとこの対応は, Br\"ustle, Hille, Ringel, R\"ohrleによって組み合わせ的 手法で与えられたものですが, 講義ではAuslander多元環と傾加群の一般論を用いてより概念的な構成を与えます. 特に傾加群の{\bf 変異}の観点から, この対応が自然なものである事が分かります.
 これはBuan, Reiten, Scottとの$2$-Calabi-Yau多元環に関する共同研究の内容を, M2の学生の辻岡佑介, 小林大輔が修士論文で有限次元多元環に応用してくれたもの です.

[1] I. Assem, D. Simson, A. Skowro\'nski: Elements of the representation theory of associative algebras. Vol. 1. Techniques of representation theory. Cambridge University Press, 2006.
[2] 岩永恭雄, 佐藤真久, 環と加群のホモロジー代数的理論, 日本評論社, 2002.



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