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2002年6月24日

オイラー数は国民の常識

Leonhard Euler

Born: 15 April 1707 in Basel, Switzerland
Died: 18 Sept 1783 in St Petersburg, Russia

Jules Henri Poincare
Born: 29 April 1854 in Nancy, Lorraine, France
Died: 17 July 1912 in Paris, France
 

http://turnbull.mcs.st-and.ac.uk/history/PictDisplay/Poincare.html



オイラーの多面体定理

凸多面体の
頂点の個数をv ,
辺の個数をe,
面の個数を f とすると
v - e + f = 2



穴のあいた閉じた曲面に対しては、
穴の数を g とすると
v - e + f = 2 - 2g

この数は曲面に対して定まる
もので曲面のオイラー数と呼ばれる。



 
 
 


今日は、
3角形に分割された多面体を考える。
 


 



各3角形の上に
次の模様(フローライン)を考える。
 
 
 
 


 
 


四面体に模様をつけると



 


 
 
 

演習問題:正8面体、正20面体に対して、
模様を描いてみよ。


この模様の出所は

cos x cos y のグラフ



 

黄色は、[0,2π]×[0,2π]

赤色は等高線

青色は最大傾斜線



 

この最大傾斜線の模様から
直角二等辺三角形を取り出し、
三角形を重心細分したものに当てはめた。
 

このようなフローラインは
曲面を3次元空間の中において
等高線に垂直な最大傾斜線として
現れる。
 

一般に、等高線と最大傾斜線は直交している。
 


この最大傾斜線で、
曲線が1点に集まるところ
双曲線のようになるところ
注目する。
 
 

      
 

等高線では、それぞれ

      
 

それぞれ、極大点、極小点
鞍点(峠点)に対応する。


オイラーの多面体定理における

頂点 v 、面 f に対してが対応し、
e に対してが対応する。





 

従って、球面上の模様に対して
オイラーの多面体定理
次のように書かれる。
ポアンカレ-ホップの定理

の個数 ‐ の個数 = 2

右辺は一般にはオイラー数となる。


 
 
オイラーの多面体定理の証明は

辺を消去して、面の数を減らす」、

辺と頂点を縮める
という2つの操作によった。

これは、最大傾斜線の模様に対しては

コブの消去に対応する。

曲面を変形して、

の対を
消滅させることが出来る。


 

実際の最大傾斜線には
流れ落ちる方向が定まっている。

同じに対しても、
極大に対応するものと、
極小に対応するものがある。

このような最大傾斜線に
対応する模様を考えると、
最大値、最小値は存在するから、

の個数 ≧ 2


 サドルに対しては、
その上下に出る枝
左右に出る枝
一方の組が増加
一方の組が減少している。
 

この枝の一本によって、
サドルが極大点、極小点に
つながっているときに、
コブの解消(対消滅)が可能である。
 


最も簡単な曲面では
最大値最小値が1つずつある。

これは球面と同相になる。
同相となるとは、同じ「座標」を
とることができることである。
 


一般には、極大点が複数、
あるいは極小点が複数あれば、
その間にサドルがあり、
対消滅させることができる。
 

従って一般の曲面に対しても

オイラー数          
= の個数 ‐ の個数 
≦ 2              である。
 
 
 
 
 

その結果、極大点極小点が
1つずつで
最大点最小点となっている
ようにできる。
 


サドルがあるときに
最小点、最大点、サドルを結ぶ
曲がった3角形

はサドルの数を k
とすると 4k 個ある。
(k =2-オイラー数)


これらは、最小点、あるいは最大点の
まわりでは
2 k 角形をなす。


 


 

この 2 k 角形の辺を元のように
縫いあわせると曲面が復元される。

その様子は、辺を縫い合わせたときに
頂点がひとつの点になる
というものである。

こうして、曲面の同相による分類が得られる。


オイラー数が 1 の時には、
向き付けを持たない曲面
「射影平面」が得られる。

    3次元の空間にある図形の表面としての
曲面には裏表があるから、
向き付けを持つ曲面である。
 

オイラー数が0の時は、
向き付けを持つ「トーラス」
または、向き付けを持たない「クラインの壷」
となる。
 

演習問題:オイラー数が0の時、
向き付けをもてば、
「トーラス」と同相になることを確かめよ。



さて、オイラー数が0のとき、
模様だけをながめて、
これが最大傾斜線であることを
忘れると、
最大点、最小点だったものと
サドルを消滅させることが
できる。
その結果、曲面の上の停留しない
流れが定義される。
 


 

これとは違う流れもある。



 

結論

曲面のオイラー数は、
曲面の上の関数の様子にも
大きな影響を与えている。
とくに、極大点、極小点、サドルだけを
もつ関数に対しては
少なくとも、(2 - オイラー数)の
サドルがある

また、オイラー数は、曲面の上の流れ
(常微分方程式の解)の挙動に
大きな影響を与えている。
とくに、オイラー数が0でないときには
必ず停留点がある。

このオイラー数は、
次元の高い空間にも定義される。
オイラー数は考えている空間の
大域的な性質を表現し、
その上の関数、流れ等に大きな影響を
与えている。